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ウィーゼンタール氏死去

「ナチスの戦争犯罪人らを追及し続けたサイモン・ウィーゼンタール氏が20日、ウィーンの自宅アパートで死亡した。96歳だった。」(9月21日:ロイター



ウィーゼンタールは、マウトハウゼン収容所(オーストリア北部)でアメリカ軍によって解放された。そこでは1万人の死体が放置されており、11万人の生き残り囚人のうち何千人もがアメリカ兵の目の前で死んでいった。
ウィーゼンタールは解放の数日後、収容所の司令室のあった部屋へ、這うようにして行った。彼はもはや歩く体力もなく、這ってゆくしかなかった。そこまでしてアメリカ軍将校に訴えたかったことは何だったのか。



「”彼はもう助かりませんよ”。
そういっている通訳の声がかすかに聞こえた。しかし、私は何としても生きるつもりだった。何としてもいいたいことがあった。そうでなければ、なぜ、かいこベッドから抜け出し、消耗しきった身体を引きずりながら、アメリカ人将校のいるこの部屋まで這い続けてきたのか。荒い息を整えた後、私はいった。
”自分は殴られました”
”誰にだね?”
”班長です”
”SS隊員かね?”
”違います。囚人です”。
アメリカ人将校は、理解しがたい様子で私を見つめた。
”この男は地獄を通り抜けてきたはずなのに・・・。弱りきって立ち上がることさえできないのに、数発殴られたことを報告するために、わざわざこの部屋まで這ってきたというのだろうか・・・。殴ったのはSS隊員でさえないのに”。



彼は全然わかっていなかったのだ。ナチス帝国がもう三日前に崩壊していたからこそ、私は殴られたことがたまらなかったのだ。私は、どんなことがあっても二度と、二度と誰にも自分を殴らせないと、決心していたのだから。サイベル大佐は、私を殴ったポーランド人班長を呼んでくるよう、部下に命じた。このことがどれほど私を安心させたことか・・・。ああ、この世に再び正義が戻ってきたのだ。彼は、本人も意識しないうちに、私に生きる意味を見つけてくれたのだった。私がこれから生きていく意味−−−私のゲットーでの友人たち、そして収容所での囚人仲間を辱め、拷問し、殺した人間たちを法のもとに裁き、正義を取り戻すことを」
(徳留絹枝著 『忘れない勇気』 潮出版社:77・78ページより。太字は引用者)


(写真はすべて管理人が現地で撮ってきたものです)

忘れない勇気
忘れない勇気
徳留 絹枝

ナチ犯罪人を追う―S・ヴィーゼンタール回顧録
ナチ犯罪人を追う―S・ヴィーゼンタール回顧録
ジーモン ヴィーゼンタール, Simon Wiesenthal, 下村 由一, 山本 達夫




at 13:03, 主義者Y, ホロコースト

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楚星蘭三, 2005/09/21 7:07 PM

最近こちらのHPも更新がお留守になっていて、メイン掲示板(http://6610.teacup.com/comiclarepublica/bbs)にもこの間に生じたもろもろの出来事(たとえば総選挙結果とか、「最先進国」の「超大国」の一角で生じたおもわぬ「自然災害」とか)を反映できず忸怩たるものがあり、S.ヴィーゼンタール氏と後藤田正春氏の訃報だけでもアップしようと思い、あわせて「もしや」と思いこちらにお邪魔したら、予想通り有益な記事がありましたので、さっそく紹介させていただきます。

折りも折、10月によみうりテレビ〜NNN系列で杉原千畝氏の生涯をドラマ化放送するそうです。局系列の性質上、「杉原氏は立派だった〜杉原氏は日本人だ〜日本人は当事も今も立派だ」という不気味な3段論法に陥ったドラマ作りになる可能性もなきにしもあらず。その意味でも注目作ですな。
http://www.ytv.co.jp/rokusen/index_set.html

板門店のとろちゃんが、オーストリアで自分とかを収容しなかった?


主義者Y, 2005/09/23 9:51 PM

楚星蘭三さん どうも
外務省訓令に逆らってビザ発給した人を称えるドラマですから、たぶんそういう3段論法にはならないでしょう。
ご紹介のURLも見に行きました。主演の反町すら「杉原千畝」の名を知らなかったようです。まだまだ世に知られざる歴史なんですね。










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アチキの毎日, 2005/09/23 2:51 AM

今日は何故かおなかがやたらヘルヘル病(なんだそれ)。さっきゴハン食べたのに、すぐ...

書評日記  パペッティア通信, 2005/09/24 4:42 AM

「通例の戦争犯罪」「人道に対する罪」で裁かれた、日本軍B・C級戦犯。この書は、保守的メディアにおける「BC級戦犯像」が、どれほど実像から隔たっているかをあきらかにしてくれる、待望の著作といえるでしょう。解毒剤としてお薦めしたい、一品です。● そもそも「BC