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なぜ避難させられなかったのか

最終章の、松野元氏(原子力安全基盤機構に在籍後、四国電力を定年退職)へのインタビューが圧巻であると思う。松野氏は原子力ムラの真ん中にいながら、住民を原子力災害から守るはずの防災体制の欠陥を3・11以前から指摘していた。


原子力災害対策特別措置法第10条第1項の定めにより福島第一原発から原子力安全・保安院に「緊急事態の通報」が届いたのが、3月11日午後4時45分。
この時点で全電源喪失・冷却機能喪失を認識=格納容器破損の恐れ→政府への通報。これが「緊急事態の通報」の本旨である。放射能が拡散する恐れがあるなら急いで知らせよ、ということだ。

同法第15条によれば、「緊急事態の通報」を主務大臣(経産大臣)が総理大臣に直ちに報告し、総理大臣は直ちに自治体に対して避難等の指示を発しなければならない。

ところが「直ちに」報告「直ちに」指示しなければならい緊急事態なのに、政府が「原子力緊急事態宣言」を出したのが午後7時3分。さらに半径3キロ以内の住民に避難指示を出したのは午後9時23分。この時点で「緊急事態の通報」から4時間38分を浪費している。10キロ圏内への避難指示は翌12日午前5時44分。同日午後3時36分には1号機が爆発。20キロ圏内への避難指示は午後6時25分だ。

松野氏は、政治家がすべての法律を熟知しているのは不可能なので「緊急事態の通報」=住民避難の指示という認識がなかったこと自体を責めてはいない。しかし、その専門である官僚こそが「緊急事態通報を受けたら直ちに避難の指示を出さねばならない」と言わねばならなかった。

ところが、管総理の目の前にいた寺坂信昭原子力・安全保安院長は何も言わなかった。
このことは国会事故調査委員会の報告とも一致している。


さらに

SPEEDIの予測が当初公開されなかったことはいまや周知の事実だが、その原因として政府は原子炉のデータを送るERSSが故障してしまったことを挙げている。正確なデータにもとづく予測が立てられないから避難には役に立たなかったという理屈だ。国会事故調もその点は政府の言い分を鵜呑みにしている。

しかし、松野氏によれば
ERSS/SPEEDIが正常に作動しなくても、手動で避難方向や範囲を予測できた
PBSで避難方向や範囲を予測できた
と言う。

PBSとは、シビアアクシデントが起きたときの格納容器の破損や放射能拡散を全国の原子炉ごとにシミュレーションしておいたデータベースだという。ERSSやSPEEDIが災害によって機能しなくなっても、オンラインでPBSを呼び出せなくても、オフラインのPCでPBSのDVD-ROMを見られるのだそうだ。じっさいは多重にバックアップの予測システムがちゃんと用意されてあった。その設計と運用の責任者が松野氏であった。

しかし国会事故調ではPBSへの言及はない。専門家ではないのでPBSというものの存在を知らない。原子力ムラの専門家なら知っているはずのものを、彼らはいわば被告の立場に立っているので訊かれなければ答えない。私も原発関連のものは人並み以上に目を通してきたつもりだが、PBSというもののを本書で初めて知った。


法のしくみも、技術的な予測の備えも、それなりに準備はされていた。しかし、恐ろしいほどの無能と無責任さが迅速な対応・活用を失し、核被害を無意味に拡大させてしまった。そのことへの痛切な反省もないままに再び原発の再稼動を進めようとしているこの国は何なのか。

もっともっと紹介したい内容はあるが、ここまで書いて怒りがいっぱいだ。ぜひ本書を一読願いたい。

そして明日は霞ヶ関一帯に集まろう!

at 19:43, 主義者Y, 原発震災

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