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8月15日に記す

この前の週末に、長野の美ヶ原を歩いてきた。
特段の目的というものはなく、標高2000メートルの場所でただ単に暑さを凌ぎたかった。一晩だけ高原の宿に泊まって天然の涼を楽しみ、文庫本の一冊でも読んでこようと思ったのだ。

浴衣を着て部屋の外を歩くような宿は久しぶりだったが、他の宿泊客が夜空を見に出て行くのに吊られて外へ出た。満天の星だ。驚くほどに北斗七星が近くに見える。近くに市街の明かりがなく、ほんとうに360度を見渡せる視界なので星空の観察にはもってこいなのだろう。そういうことは、このとき吊られて外に出てみるまでは全く予期していなかった。
短い間に人工衛星らしき光の軌跡が3回か4回ほど見えた。目の悪い私にも星が天から降ってくるほど煌めいて、壮観な眺めだった。こんな空を見たのは久しぶりだ。20年ほど前にタイの島を旅したとき、浜辺で見た星空は凄かった。それ以来かもしれない。

宿の入口からやや歩き、他の人影が見えないほど離れた暗闇のなかで、独り夜空を見上げていた。星空の美しさは、ただ堪能すればよい。しかしそのとき不意に、昔に見たドラマのセリフが脳裏に甦ってきた。
「降るような星空ってのは、いいもんだったなあ」
このブログのサイドバーにも貼ってあるNHKドラマ「男たちの旅路」でつぶやく鶴田浩二のセリフである。正確に言うと鶴田浩二の演じる吉岡司令補の、特攻時代の仲間が出撃前夜に語った言葉である。

「俺は一晩中、雲よ晴れてくれと空に願った。晴れたら奴を起こして、降るような星空を見せてやりたかった・・・翌朝、曇り空の中を奴は飛んでいった。そして帰ってこなかった」

8月の時期だからなのか、その場面をありありと思い出してしまった。特攻については、いろんな記録・作品を見てきたけれど、これは特に生々しく痛ましく心に刻まれたひとつである。
今より昔のドラマや映画には、こういう戦争を思い出す場面が端々にあったと思う。優れた作品には歴史の記憶を語り継ぐ力もある。そういう作品を紹介したり薦めたりするのも、語り継ぐことの一部になるだろう。

さて冒頭に掲げた書籍と、戦中派「吉岡司令補」のことを結びつけて書きたかったのだけど・・・エネルギーが要るのである。いろんな想いが渦巻いて、とてもしんどい。言いたいことの100分の1も書いていないけど、紹介だけでもしておかねば。前著「30代が読んだ『わだつみ』」で著者の本をはじめて読んだが、今回も出色の出来である。何度でも繰り返して噛み締めたい。ぜひ一読してほしい。今回の本で知ったことだが、著者は高校生のときに管制塔占拠後の三里塚闘争にも参加したことがあるらしい。まあ、このブログを訪問してくださっている新左翼経験者の皆様にも興味をもたせるということで(笑)

星空のことについてもうひとつ。長ったらしく星空の枕話をしたのは、もうひとつ理由がある。
私は北斗七星とカシオペア座をかろうじて判別できる程度の星座音痴だが、北極星の位置を知る方法はボンヤリと憶えていたのでそれを発見することができた。ああこれが海の上とかだったら、北と南の方位はこれで知ることができるんだな、などとそのときは呑気なことを考えていた。

さてその前後は半藤一利「ソ連が満州に侵攻した夏」も読んでいたので、どうも想像力が逞しくなっていて、あとからではあるけど美ヶ原で見たあまりにも美しい星空が「満州」と重なってしまったのだ。

満州のあちこちから65年前の夏、開拓団などにいた日本人はこんなふうに夜空を見上げながら逃げてきたんじゃないか。

南をめざして

茫漠たる大地にかかる満天の星。追ってくるソ連軍や中国人の報復を恐れて、幾多の人々が夜を日に継いで逃げていく。ひたすら南へ、日本の方向へ。そして何万という子供や老人、女性が亡くなった。じつは私は沖縄と並んで、旧満州でも非業の死に斃れた人々へのこだわりがある。侵略の加害と被害が折り重なった複雑な構造を、とりあえず置いておいても、である。

五味川純平「人間の条件」で、主人公の梶がやはり同じように満州の荒野の逃避行で、行き倒れて死にゆく少年を前にして号泣する場面も思い出す。ああ・・・あれもこれも・・・

あまりにも美しく大きな星空だったので、どうにもそういうイメージと結びつけて思い出してしまう。8月のこの時期は想像力が肥大して、いろいろな風景を媒介にしてツラい深みに嵌まるのである。程程にセーブしないと、しんどいのである。満州里、ハイラル、ハルビン、長春(新京)、瀋陽(奉天)、撫順、大連など、旧満州各地の現場を歩いてきたこともあるから、尚更思い入れを持ちやすいのかもしれない。私の父方の伯父もシベリア抑留から帰らなかったと聞いている。
まあ星空を眺めてこんなことを想像する奴は、あんまり居ないだろうけど(苦笑)

とりとめもなく書いてしまった。
しかし、自分が経験していない歴史の記憶を伝える作業を、微力でもしなければいかんと思う。

at 17:45, 主義者Y, 第二次世界大戦

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独ソ戦開始64周年

日付に敏感な大戦史マニアとしては、こだわっておく。
きょうは、近代戦史上ではもっとも非情だった独ソ戦がはじまった日。
ベラルーシでは住民の4人にひとりが殺された。SSのアインザッツグルッペン(機動殺戮部隊)や警察部隊が、各地でユダヤ住民、ソ連市民を殺戮してまわった。
ソ連軍のドイツ住民に対する報復も凄まじかった。


レニングラード(現サンクト・ペテルスブルグ)のピスカリョフ墓地
900日におよぶドイツ軍の包囲戦のもと、100万人の市民が亡くなったと言われる。個人名はなく、「1943年」などと刻された銘板のみの区画が並ぶ。
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at 12:31, 主義者Y, 第二次世界大戦

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生きて虜囚の辱めを受けず〜忘れられた人々

大日本帝国の「戦陣訓」ではない。
敵軍の捕虜になることが許されざる「恥」となったのは、ソ連軍でも同様だった。それは祖国に対する「裏切り」でもあった。



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at 00:41, 主義者Y, 第二次世界大戦

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対独終戦60周年


(モスクワ:無名戦士の墓)

テロの脅威に結束訴え モスクワで戦勝60年式典(5月9日:共同通信)

たしかにドイツとロシアの和解は歴史的偉業だ。しかし戦中戦後の抑圧について、ロシアは充分自覚的であるとは言えない。
そして新たな政治的思惑の道具として記念式典は利用される。


(ラトビア リガ:独立記念塔のふもとに立つ衛兵)

対独戦勝60周年を祝えない国(3月9日エントリー)



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at 23:15, 主義者Y, 第二次世界大戦

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東京大空襲〜米軍兵士の証言

3月10日は東京大空襲の日。
いろんなメディア、あちこちのブログでも言及されることが多かった。左右を問わず、悲惨な殺戮の歴史を忘れるなという点では変わらない。(そこから導出される主張の違いはあるにしても)

それらのなかで、ひとつ気になった番組があった。
NHK・BSドキュメンタリー「東京を爆撃した兵士たち」(3月5日放映)は、B29に搭乗して東京を火の海にした米軍兵士たちの現在を映し出していた。

60年後のいま、「殺した側」の人間たちはどう思っているのだろうか。
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at 17:07, 主義者Y, 第二次世界大戦

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対独戦勝60周年を祝えない国

ドイツのことではない。
モスクワで開催される予定の記念行事(5月9日)にプーチン大統領が各国首脳を招いたところ、エストニアとリトアニアの両国は参加を見合わせた。(産経新聞3月9日
・・・無理もないなあ。
バルト三国にとっては、ソ連の対ドイツ戦勝利は、同時に独立を失った日でもあるのだから。ラトビア大統領は参加を表明しつつも、そのことにはクギを刺した。その後50年に及ぶソ連による占領の開始でもある、と。
ロシアは不快感を示しているが、いっぽうでバルト諸国に対するスターリン時代の過ちを素直に謝っていないようだ。そのことが三国国民のなかにわだかまりを残している。日本と韓国・中国の関係に似てなくもない。
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at 16:36, 主義者Y, 第二次世界大戦

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カティンの森事件

ブログ「壊れる前に・・・」さんで、カティンの森虐殺事件の追悼式典がポーランドで催されていたことを知りました。
ポーランドには何度も足を運んで思い入れの強いところなので、ちょっと紹介させていただきます。

(写真はカティンの森事件の記念碑:ワルシャワ市内)
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at 21:02, 主義者Y, 第二次世界大戦

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正義の戦争の記憶

ノルマンディー上陸作戦海岸「オマハ・ビーチ」に面して、広大なアメリカ軍墓地がある。ほんとうは60周年にあたる今年の6月に行きたかったのだが、仕事の多忙な時期でもあり、前倒しで昨年の12月に訪れた。

「プライベート・ライアン」をご覧になった方も多いであろう。冒頭に出てくる墓地はここだ。ここで夥しい若者の血が流れた。


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at 19:17, 主義者Y, 第二次世界大戦

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